ワイヤー矯正とマウスピース矯正の違い
公開日:|更新日:
歯列矯正方法として代表的なのがワイヤー矯正です。ですが、見た目の問題が気になる…ということでマウスピース矯正を検討する方も増えてきました。どちらがいいか悩んでいる方のためにそれぞれの違いについてご紹介します。
どのような治療方法?
ワイヤー矯正
ブラケットと呼ばれる装置を歯に取り付け、そこにワイヤーを通して矯正する方法です。歯列矯正の中では最も代表的なものなので、歯列矯正といえばこちらを想像する方が多いはず。治療期間中に自分で取り外しはできません。
マウスピース矯正
自分の歯の型を取り、それを元にしながらアライナーと呼ばれるマウスピース型の矯正器具を作り、装着する方法です。取り外し可能な透明なマウスピースで矯正を行っていく形になるのですが、歯が動いてきたら少しずつマウスピースを作り変えていかなければなりません。
メリット・デメリット
歯列矯正であるワイヤー矯正やマウスピース矯正。これらは、美しい歯並びのための代表的な治療法です。しかし、名前だけでは違いがいまいちわからないものです。審美性や食事のしやすさ、お手入れの方法、しゃべりやすさなどといった点から、2つの治療法を比較してみましょう。
ワイヤー矯正
審美性
一般的な方法であるワイヤー矯正は、使用するブラケットによって目立つことがあります。特に口が開いて歯茎が見えやすいタイミング。たとえば、笑ったときに、ブラケットが目立つとどうしても審美性に欠けてしまいます。ワイヤー矯正をしていると笑うのが嫌になり、ストレスになってしまう方もいるかもしれません。
しかし近年では、ブラケットがプラスチック素材やセラミック素材のものも増え、目立たないワイヤー矯正ができるようになりました。これらの素材を選べば、歯列矯正をしていても目立ちにくいため、女性や営業職など人と接する職業の人にもおすすめ。特に裏側に装着するものもあり、これであれば周囲にはほとんどバレづらく人気です。
食事
歯にワイヤーを装着した直後は慣れていないせいもあり、違和感や痛みを感じやすく食事もしにくく感じるかもしれません。また、骨付き肉やおせんべいなど装置にダメージを与えるような硬いものなどは控えたほうがいい、といわれることもあります。そのほか、ガムやお餅といったねばついた食べ物も避けたほうが無難です。食事について不明な点は医師に相談して万が一のトラブルが起きないようにしましょう。
お手入れ
矯正専用の補助器具などで磨く必要があり、お手入れは多少難しくなります。矯正専用のフロスなどを使ってケアをしないと、装置周辺などは虫歯になるリスクもあります。特にブラケットの周りは45°の角度で歯ブラシを当てて歯磨きをするなど、コツをしっかりつかんでケアをしましょう。
クリニックではケアに関する指導も行っていますので、聞いた方法から逸脱しないように注意してください。また、自分では取り外しできないため、毎月クリニックでメンテナンスをする必要があります。
しゃべりやすさ
しゃべりやすさは器具の種類によっても異なります。表側装置であれば違和感はほとんどありませんが、裏側装置の場合、一時的に発音がしにくいことも。装置に舌が慣れていないことが原因のため、慣れてしまえば違和感なくしゃべることができるでしょう。発音しにくいのは、た行やな行など前歯に舌が当たる言葉。これらの言葉を話す際にブラケットに舌が当たってしまうので、うまく発音しづらくなります。
マウスピース矯正
審美性
透明のマウスピースであれば、口を開けても目立たず、装着時の審美性に関するデメリットは感じないことがほとんどです。笑えない、といったコンプレックスを解消できるのがマウスピース矯正といえます。マウスピース矯正では、ワイヤーやブラケットといった装置は取り付けませんので、見た目での変化はわかりづらいです。
こういったメリットから、女性や人と話すことが多い仕事をしている人、また思春期の子どもにとってもストレスが少ない矯正方法です。できるだけ周りに気づかれずに矯正をしたい、審美性は特に気になっている、という方であればマウスピース矯正がおすすめです。
食事
マウスピース矯正は取り外しが可能なので、食事時のデメリットがありません。ただし、マウスピースを付けたまま、色が濃いものを食べたり、飲んだりするのは色が移ってしまったりして、ケアが大変になります。カレーやキムチ、コーヒー、紅茶、赤ワインなどが代表例です。そのほかにも着色料が含まれたものは避けたほうが無難です。できる限り、マウスピースは外してから食事をするようにすること、あまり色が強いものは人前では摂らないようにするなどの注意をしましょう。
お手入れ
マウスピースは自分で取り外し可能です。そのため、歯磨きも普段通りできるのがメリット。他の方法での矯正中は歯磨きなどもしにくく、虫歯になりやすいといわれていますが、マウスピース矯正であれば、普段通りのお手入れができるので、虫歯になりにくいです。マウスピースは、別途歯ブラシと歯磨き粉でやさしく磨く必要があります。また、長時間外す場合には専用のケースに収めるようにして清潔な状態を保ってください。
しゃべりやすさ
マウスピース矯正であれば通常は問題なく話をすることができます。しかし、矯正を始めたばかりの頃は、マウスピース自体に慣れていないので、多少話しにくさを感じることがあるでしょう。大切な仕事の会議などで、どうしても話す際に違和感がある場合は、そのときだけ取り外すなどの工夫で解決できます。もちろんマウスピースに慣れてくれば、しゃべりにくさはなくなりますので、最初に違和感を覚えても気にしないようにしましょう。
金額
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正で使う装置は歯の表面に取り付ける表側矯正と舌側に取り付ける裏側矯正があり、それぞれで費用が変わります。表側矯正の場合は70~110万円ほど、裏側矯正の場合は100~150万円ほどとなっており、本当は裏側矯正にしたいものの費用のことを考えて表側矯正で妥協する方も少なくありません。
マウスピース矯正
費用は40~110万円ほどとなります。相場の中でもかなりの開きがありますが、これは歯の状態によって治療期間などが大きく変わるためです。矯正器具であるアライナー自体にも価格の開きがありますし、選択する矯正歯科の方針によって何回アライナーを作り変えるかも違いがあります。
マウスピース矯正だけでは思うように矯正ができないケースでは補助矯正装置を使うこともあり、この場合は追加費用も確認しておかなければなりません。
リスク
症例数が多く治療を始めやすいワイヤー矯正やマウスピース矯正ですが、体質などによっては、リスクはないとはいえません。ワイヤー矯正やマウスピース矯正における、アレルギーや痛みなどのリスクについて知っておきましょう。
ワイヤー矯正
24時間装着したままなので歯磨きで磨きにくい箇所があったり、虫歯になることがあります。
痛み
ワイヤー矯正は、歯が動く痛みにくわえ、ワイヤーなどの装置が口内に当たる痛みがあります。食事中に上下の歯がぶつかったり、口内炎ができたり、唇や口の中が傷ついたりすることで痛みを伴うことも。痛みに関しては個人差があり、キリキリと強い痛みを感じる人もいれば、かゆみを感じる程度の人もいます。慣れてくると痛みはやわらぐことがほとんどです。また、矯正装置が口内に当たらないようにカバーを付ける方法もあります。
アレルギー
ワイヤー矯正の装置には金属が使用されているため、「歯科金属アレルギー」が起こる可能性があります。頬の粘膜や舌、歯茎の腫れ、体に皮膚炎などが主な症状です。[注1]
このアレルギーは、口の中の金属から金属イオンが流れ出し、体内を巡ることが原因です。水泡状の皮膚炎やアトピー性皮膚炎などのよう症状が出ることもあるため注意しましょう。また、元から金属アレルギーを持っていることがわかっていれば、検査をしてから治療を始めることをおすすめします。
マウスピース矯正
簡単に取り外せることもあり、つけるのが面倒になって外してしまう人も。そうなると矯正効果は期待できません。
痛み
マウスピース矯正でも痛みがないわけではありません。特にマウスピースを装着後1~2日は、圧迫感があることが多いです。強い痛みを感じることもあれば、少しかゆい、違和感がある、といった程度に感じられるなど個人差があります。
マウスピース矯正のインビザラインは2週間に1回交換します。ワイヤー矯正よりも回数は多いものの、1回の歯の移動幅が少ないので、歯への圧力が低く痛みも感じにくいです。
アレルギー
マウスピース矯正では金属を使わないので、金属アレルギーの心配はありませんので、このアレルギーを持つ方でも治療を受けられるでしょう。しかし、マウスピース矯正ではどんなアレルギーも心配ないわけではありません。レジンという素材によってアレルギー症状が引き起こされることがあります。
歯の治療などでも多く使用されているレジンですが、じんましんなどの症状が起こるケースがあります。アトピー性皮膚炎や粘膜の腫れ、かゆみ、痛みなどを伴うこともあるので注意が必要です。もし、こういった症状がある場合には、医師に必ず相談するようにしましょう。
人によって最適な矯正方法が違う
ワイヤー矯正に向いている人
大幅に歯の矯正をしたい人やしっかりと歯並びを改善したいと思っている人はワイヤー矯正がおすすめです。さらに、虫歯や歯周病で歯を失うリスクを減らしたいと考えている人も向いています。歯並びによる発音障害もワイヤー矯正によって改善が可能です。
マウスピース矯正に向いている人
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正などの審美性が気になる方におすすめです。今まで通りに食事を楽しみたい人や、痛みの少ない方法で矯正をしたい人にも向いています。装着時間やケースへの収納といった管理が必要ですが、普段の生活に支障を起こすことはありません。
効率よく歯列矯正をしたいからワイヤー矯正を検討しているものの見た目の問題も気になる…といった方からはそれぞれを組み合わせた方法も選択されています。まずはワイヤーの装置を付けて効果的に歯を動かし、その後にマウスピース矯正に移行する方法もあるのです。
どちらが自分に最も適しているかは人によって違うので、それぞれの特徴を比較して検討してみてくださいね。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正には、それぞれにもまたさまざまな種類があります。クリニックによってできる矯正方法が異なることもあるので、事前に確認をしておきましょう。こちらのページでは矯正方法について詳しく解説しているので参考にしてみてください。
参考資料
[注1]北海道矯正歯科学会雑誌/金属アレルギーをもつ矯正患者に関する研究(2017年12月27日)